2018年04月12日

路上生活者の一生と居酒屋の個室での会話という 歪な組み合わせで送る実験作


         『 み ど り 』    作・演出 げんごろう

  日時  2018年4月6日(金)〜8日(日)  会場  人間座スタジオ



 宣材のキャッチフレーズには「 2018年、日本国内の路上生活者は推定6000人前後  彼の最期を見たものはどこにもいなかった__ 」とあって、真っ向から社会問題に向かい合って取り組む骨太な作品かと期待していたが、実際の舞台は、その現代社会の一面をちらっと眺めて通り過ぎたようで、少し物足りなさが残った。

 作品の大半を占めているのは、ある居酒屋の一室での、女一・男二の三人の若者が、久々に集まっての、ちゃんこ鍋をかこんで飲み食いながらの会話だ。
 それが取り留めもなく、次々と関連もなく飛び出して来ては消えてゆく感じで、何か耳に残るものはあまりなく、只々だらだらとだべっている感じだ。
 後で聞くところによると、作者が書いたセリフはなく、出演者の即興で成り立たせていたそうで、それにしては、三人は見事に自然体で、自分達の日常風景を演じていたと思うし、これがげんごろうさんの意図したところの実験なのだろうか。
 ところが、これらが一体、下手にダンボール箱の囲いの中で暮らしている生活者とどう関係して行くのかが、気になるところだが、その路上生活者は、客の女の兄に当たるらしい。
 その兄は閉鎖的な性格で、家族を捨て、何故か孤独な生き方になってしまっている。
 映像面で現実の一面を写し撮って来ているのは面白いのだが、兄の妹や母親との葛藤や、何故そうならざるを得なかったのか等々、もう少し物言わぬ人の立場を知りたいと思うのだが、......それには作者のげんごろうさんが、優しさだけではなく、真実を掘り当てる厳しさも必要になって来るのではないか。

 これを糧にして、飛躍して、成長されて行かれることを願っています。

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2018年03月27日

かんから館第37回公演 を観て


       『 ケーキのサンタを食べちゃうぞ 』  
                       作・演出  川村武郎


      日時  3月23日(金)〜25日(日)   会場  人間座スタジオ
 
 何だか、ほんわかした家庭劇を観た思いだ。

 内容は、京都のとあるラウンジバーに、母親の葬儀を終えた翌日、集まった父親と娘3人、それに末娘の恋人.....何故そこに集まって来たのか? 慰労会なのか?
 とにかく、飲物をじゃんじゃん飲みながら、身内の会話が取り留めもなく次々に繰り広げられる.....長女の離婚話や、進学のため家を出て京都へやって来た昔のことなどなど.....中でも、末娘の”できちゃった婚”の打ち明け話から、この場がたちまち結婚式の宴となり、オーダーで出てきたショートケーキがウェディングケーキに早変わりし、それがまた幼い頃のクリスマスケーキの思い出に繋がり、その時父親がそのケーキのサンタを食べたので、末娘は怒って泣いたことなどなど.....この場に居合わせ話を聞いていた恋人の男は、この家族の絆や心の温もりに感激し涙を流すのであった。
 それから、亡くなった母親はどんな女性であったかも分かって来る。

 作・演出、それに俳優でもある川村武郎さんのお人柄がにじみ出ている、好感の持てる舞台であった。
 それは、大上段に社会問題を振りかざすのではなく、そっとささやかな日常生活の中に”人間”の有様を映し出している、優しさにあった。
 川村さんは京都の演劇界でも長年にわたり活躍されていて、良い作品を残してられる。
 これからもご活躍を願っています。

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2018年03月20日

広田ゆうみ+二口大学 公演を観て


      『 この道はいつか来た道 』   作  別役実

   日時  2018年3月16日(金)〜17日(日)  会場  人間座スタジオ

  前説によれば ”過去十年間にわたり演劇ユニット<小さなもうひとつの場所>で多数の別役実作品を上演し、現在、氏の童話の朗読も行う広田ゆうみと、第10回関西現代演劇俳優賞を受賞するなどその実力を高く評価されている二口大学が、別役実作品を上演する” とある。
 今回は2013年に上演された作品を、再び取り上げたそうだ。
 
 作品については、誰もが一読されることを願い解説抜きで、また再度の読み返しもせずに舞台を観たままの感想で言うと、演じる俳優によって、創られる舞台が違ってくるのだと今更ながら思わされた。

 以前観た老舗の劇団の舞台とは対照的に、今回の舞台では、路上生活者の二人の男女が、”若いカップル”に写り、彼らのやり取り・会話からは、愛情がにじみ出る心温まる、美しい作品になっていた。

 これは別役実作品に執着されている広田ゆうみさんの鋭敏な感性によるもので、独自の別役作品の世界を創り出していて、それは誰も真似することのできない、優れた作品になっている。

 また何年か後、この作品を再演される時は、俳優としても年を重ねられたお二人は、どんな舞台を観せてくれるのだろう.......ファンもたくさん付いてられるようで頼もしい限りだ。

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posted by 人間座 at 19:31| Comment(0) | 日記